2006.10.24_tues うへへ。ひそかにここを再開します。
今日は朝から曇り空。気持ちも少しどんとりしている。左肩があいかわらず痛い。40肩?50肩?やれやれ、そういう年になってしまったのだ。bbsに書いているが、仕事の締め切りが切迫している。言い訳の聞かないスケジュール。そういうときはどうもなにかに逃げたがる。締め切りと会議は大嫌いだ。バルセロナの建築家で、ガウディのサクラダファミリアの修復に携わる田中さんにお会いしたとき、「スペインでは作品の完成は神のみぞ知る、なんですよ」とうかがって、本当にそこに住みたくなったほどだ。といって、ぼくのようなぐうたらな性格だと、なんにも仕上がらないうちに死んでしまうだろうけど。締め切りは、お尻をたたいてくれるので助かることがあるが、会議は本当に苦手。意見を簡潔に述べ合い、さっと切り上げたらいいけど、人数が多くなるほど式典のようになる。最初のあいさつ、途中で配布された文章を一字一句もらさず長々と読み続ける報告者、会議が終わりそうになり、何か質問は?と聞くやいなや、手をあげてほとんど些末な質問や反論を繰り広げる人、二時間、三時間、時には四時間も続くと、もうダメだ。その日は心身共にぐったりとなり、そのあとの仕事に手が着かないばかりか、なにもしたくなくなる。なにかたちの悪い修行をさせられている気になる。気の合う人となら何時間でも話続けられるのに、勝手な性格で、自分でもあきれるが会議中はほとんど他のことを考えてる。デザインスケッチをしたり、多面体を書いたり、コドモだ。嫌いなもの、といえば東京がそうだ。街として好きになれない。都心がだめ。渋谷、新宿、六本木。でもこの前、根津の界隈に行ったときにほっとした。あのあたり、好きです。散歩しててある家の前に子猫が座って通りをじっと見ていた。そのうしろには、木戸を小さく切った猫専用のドアがあって笑った。しばらくすると犬が通りかかって、猫は一目散にその中へ。様子を見てると、しばらくして顔だけ出して通りを観察。その姿が実に絵になっていた。街のスケールと生活感が安心させてくれるのかもしれない。・・・と、たわいない話を書いているうちに夕方になりつつある。そうです。仕事にもどらなければ。企業で働いていて、自分のサイトに日記を書き込んでるときっと怒られるだろうな。お役所だったらたいへんなことになります。仕事は今夜締め切りがひとつ。明日がひとつ。今週末がひとつ。来週の前半までがひとつ。ははは。やるしかありません。
2002.11.19_tue 長い間・・・
日記をさぼっていた。書かなくなると、だんだん負担になってきてけっこうくよくよしている。何人かに日記更新していませんね、と言われると、また負担になって・・・。別に人に読んでもらおうと思って書いているわけじゃないけど、見ていてくれるとなるとがんばろう、という気にもなる。で、前に書いてからもう一ヶ月以上たってしまった。早い。その間のことをきちんと書くのは不可能になったけど、がんばって再開しようと思う。最近、物忘れが激しく、一週間のことがうつろに記憶のなかで漂っている。忙しいのと年のせいで、かな?誰かから四十代って坂道を転げ落ちるのに似ているって言われたけど、まさに。こういう時は時間をさかのぼって書くといいということも聞いたのでやってみる。では、今日から・・・。朝から近代美術館の今期最後の特別展のグラフィックの仕上げをしていた。ドイツの現代作家、リヒターである。写真を再び描き直し、それをオフセットでプリントをするというややこしい技法で対象物を解体していく人だ。静謐でおとなしい作風だが、深い。実はアテネのコンペを終わってから始めたのだけれど、うまくいかずこの一週間、画面とにらめっこしていた。彼の娘を主題にしたB全ポスター、アブストラクトのB3ポスター、そしてリーフレットにチケット・・・。午後のプレゼンを学芸員の吉原さんに無理をお願いして夜にのばしてもらい、一気に仕上げる。最終的には満足のできるものになった、はずである。甘いな、ツメが、きっと。(印刷所の入札結果がでるまであと一週間あるから、ブラッシュアップしよう)週末から今日にかけてずっと事務所にこもりっきりで久しぶりに集中した。コンペ以降、もうひとつ体調が思わしくなくてデザインから逃げていたのだけど。さらにさかのぼっていくと・・・金曜日・土曜日は新潟に行っていた。東日本デザイン団体会議に出席するためだ。同じ学科の宮島先生と視覚伝達デザイン学科の先生と女子美の先生と。場所は金属加工のメッカ、新潟県燕市。東京から関越自動車道で三時間ちょっとだった。基調講演は長岡造形大の豊口学長、さすが大阪万博のくだりは感心。金曜日は鍛冶体験をして東京へ新幹線で。その間を利用して学会のストラクチャ構造を設計。ほぼ見通しがたつ。いい感じ。(ところで工場見学は感動の連続であった。なぜ工場ってドキドキするのだろう?特に金属加工の機械を見ると異常に興奮してなにか造りたくなる。金属フェチ?)で、木曜日、うーんと、大学で講義して、そして思い出した。教授会だった。なんと5時間以上!学長選の予備選もあり、疲労困憊。そのあと研究室会議で夜の11時半。会議がいやでサラリーマンを避けたはずの人生が・・・なんということだろう。代々木に帰り着いたのは午前様。なにもやる気がしなくてダウン。で、水曜日、この日は徳島にいて、フラーの友人、リムさんをお迎えした。この件についてはまた別の機会に書こうと思うが、エキサイティングな出会いだった。その三日後の日曜日にリムさんから電話をいただき、フラーの共同製作者サダオ氏に連絡をしてくれたそうだ。どんな風に?へんなやつがいるよ、とか言われてたりして・・・。そして本当かどうか今度メールで確かめるが、来年一月にマレーシアとシンガポールで展覧会を開きなさい、コーディネートしてあげる、と言われたのである。流暢な英語のため、たぶんとしか言えないが。You should keep in touch with me, right? (連絡を忘れないように、いいかね?)と前と同じ言葉で念押しされつつ。としたらば、ぜんぜん時間がない。二ヶ月間の猶予。彼の言い方は再来年の一月じゃなかった。フラーのドームは見たいけど・・・(リムさんの所有するホテルの庭にフラーと共同で制作した40mのドームとフラーが滞在した部屋を残してあるそうで、それはぜひ見たいものだが)時間はさかのぼる。火曜日。いまスケジュールノートを広げた。もはや記憶が曖昧になっている。火曜日は疲労困憊していた。月曜日がアテネコンペの締め切り日で、その翌日。午前中から午後にかけては事務所の大掃除。明日のリムさんを迎えるためにかなり真剣に。夕方、来年の泌尿器学会のデザインミーティングを事務所で。あと読売新聞の記者の取材を受けて・・・。あとなんだっけ?覚えていない。あ、そうそう夜、ラジオに出演したあと、中井さん、shuくんと韓国料理の店でコンペ打ち上げ。さすがに倒れて寝ました。月曜日。覚えています。死にそうになっていました。朝方、A0ポスター二枚のうち、最後の出力データを四国写研に出し、そのまま寝たかったけど、中井さんとshuくんが事務所にやってきて梱包準備をしたり、もう一度レギュレーションを確認したり、提出書類をまとめたり、そうこうしているうちに出力されパネル張りされた二枚のポスターが事務所に。自分でいうものなんですが、なかなかいいです、仕上がりが・・・。48時間ほぼ連続した作業がそこに凝縮され、なんてね。至福の一瞬。で最終梱包し、二人が神戸のDHLまで運んでくれました。(荷物はDHLのホームページでアテネまで追跡でき、木曜日の時点で向こうに着きました。やりました。あとは審査結果を待つのみ。審査員にアピールできるだろうか?)日曜日。終日コンペ作業。四国写研の渡辺さん、休みの日に色校を出してもらったり、写真を修整してもらったり。ここでかなり質が向上したのでした。コンペは最後の追い込みと質をどこまで高めるかが勝負。今回は予想を上回っていい感じになったもの、彼のおかげ、ありがとうございました。土曜日。この日のことは忘れないだろう。朝はやくに徳島に帰るため羽田空港へ。でも席がとれず、さくらラウンジに直行。普段はすこし休んだり、シャワーを借りたりするだけなのに、最終便までずっといた。ちょっとノドが痛かったけど(このときはまだ元気で、結果的に月曜日に最悪の体調になってしまう)アテネコンペの作業。中井さんの図面を精緻化したり、ラフを変更したり。けっこうねばってねばって。その時間の醍醐味は、とても苦しいけど、言葉でいいあらわせないほど豊かな気分だ。自分が空港にいることも時間のことも忘れて没頭。おかげで一日、食事をとらなかった。金曜日、大学で4年のゼミと大学院のゼミ。卒制提出まであと二ヶ月。代々木に帰ってからコンペ作業開始。忙しい日でした。木曜日、終日大学にいる。夜、徳島では中井さんとshuくんに無理をいってモデルの夜景を小松海岸で撮影してもらう。もちろん、米津さんが撮影。荷台の車のハイビーム光とライト三機で照らし出したそうな。仕上がりは・・・最高でした。今回の仕上がりは米津さんの写真によるところが大きい。デザインでがんばろうという気にさせられる。米津さん、素晴らしい写真ありがとうございました、結果がよければいいですが。水曜日は早稲田大で講義。ぼくの課題提示の番で、テーマはジオスコープ・パーク。地球を外から見るように自分を相対化してもらう。21世紀の子供たちのために。(けっこうマジだったりする)作品提出は二十日。火曜日、朝五時半、小松海岸にチームと米津さんで集まってご来光を背にモデル撮影。釣り人が数人いたけど、きっとへんなやつらだと思ったことだろう。夕方、泌尿器学会デザイン打ち合わせ。月曜日、終日モデル撮影。でも天候が悪く、午前中にボードウォークに行くも途中で断念し、天候待ち。映画の撮影みたいだけど、屋外の撮影はこうなってしまう。イライラするけど仕方がない。この時点ではコンペの雲行きやばし、と懸念された。日曜日は終日、コンペの下準備。(仕事でプレゼンしたけど記憶が飛んでいる。信じられません、やったこと忘れるなんて)土曜日、テトラヒリックと二十面体のパッケージをオキタくんとつくる。午後で終わるつもりが深夜まで没頭。11月1日金曜日。この日は大学にいた。芸祭で大学は休講だけど、将来構想委員会なるところで基礎デザイン学科の将来を語る。ぼくが語っていいのだろうか?不安なのにしゃべれてしまう自分が怖い。木曜日。この日のことはよく覚えている。大学は休講で、なにもすることがない。ほんとはやってない仕事やコンペがあるのだけど、ムクムクとモデリングしたい病が朝から募り、東急ハンズへ行ってアルミパイプやジョイントの素材を買い込んでしまう。どうしてハンズに行くとワクワクするのだろう。病気再発?代々木のマンションから新宿南口のハンズまで歩いて約10分。近いのが災いした、と言える、かどうか。で、前から気になっていた八面体を四本ストラッドのテンセグリティで試作する。深夜に仕上がる、やっぱりできるのだ!夏休みにはうまくいかなかったが、その理由も今はわかる。ハンズに行って良かった。結果的には四面体のカタチになったけど、構造はちがう。それはあきらかにフラーのモデルにはない。興奮する。ひとりでモデリングしてドキドキしているのは人から見るときっと不気味にちがいない、というバランス感覚はまだ残っているつもり。でも、狭いマンションのなかでひとり声に出さず絶叫する。やったー。これは次のプロジェクトに・・・ムフフ。(やっぱり病気でした)火曜日、29日だ。この日は徳島の吉野町、車で約1時間のところにあるエスティック本社で打ち合わせ。夕方帰ってきて、飛翔会という経営者のグループを事務所に迎え、講義。夜、料亭で接待される。女将さんの小唄を聞く。オヤジな一夜。月曜日、終日、打ち合わせ、だったように思う。書いてないけど、この一週間は毎日コンペチームと議論を重ねた。それが最後のスパートにつながったのだと思う。無駄なようだけど、思考実験は大切だ。・・・ここまで書いてきて、そろそろ記憶が茫漠としている。スケジュールに書いてあることしか記憶になかったりする。あと、ビジネスメッセのことやその準備の頃のことがあるのだけど、それは次回元気があったら書くことににしよう。総じてこの一ヶ月はメッセとコンペに終始しました。そういえばメッセの前も徹夜してたような、その前も徹夜したような。学生時代から二十年たつけど、ずっとそういう生活が続いているような。で、体がボロボロかというとそうでもない、(と勘違いしているだけなのかな?)ストレスはゼロかもしれない。大勢での会議とパーティが苦手なだけだ。(前者は顔が硬直するし、後者は笑顔つくるので疲れる)好きな仕事を選んでよかった、とつくづく思う。さて。この一ヶ月間のエポックはリムさんに出会えたことでした。夢は念ずればかなうのだ、しかも無理に求めなくてもやってくる。ごく自然に。そう確信するようになってきた。メッセに出品したのも、そのためにドロドロになったのも、彼に会って、シナジェティクス・モデルを見せるためだったのかもしれない。フラーに会うことはもはやかなわないが、リムさんを通じて、彼のコンセプトに少しだけ触れたように思えたのだった。お世話になったいろんな人に多謝。
2002.10.10_thu 興奮の一週間
おっと、気がつけば一週間が過ぎ去っていた・・・。ビジネスメッセが来週の木曜日からはじまる。そのための準備、やや遅れ気味だが、なんとか間に合いそうな気配で進んでいる、と思う。東京から講義の合間に徳島のいろんな場所に確認の電話をいれたり、メールしたり、図面を送ったり・・・。多面体効果でアドレナリン出っぱなし。テンセグリティ・テーブルのディテールモデルを大隆精機が高品位に仕上げてくれて感動したり、shuくんの怒濤のようなモデリング制作に圧倒されたり、中井さんからアテネコンペのプランがバシバシ届いたり、で、ぼくはというと段取りでオタオタしているのだけれど、充実感に包まれている。去年の今頃がそうだった。今年、大学に通うようになって忘れていたダイナミズムがよみがえってくる。体に血が通う感じ。この一週間、日記もその、おろそかになっていたのだ。(ま、見てる人いないから記録ということで・・・と自分に言い聞かす)で、またまた記録風に一週間の出来事を思い出そう。先週、木曜日から。朝、表示方法論の演習。講義の合間に研究室に帰ってきてアテネのスタディ。午後、院2年ゼミ。そのあと辛い教授会に出席して(今回は短時間で助かる)、すぐ国分寺へバスで。4年ゼミの有志たちとの飲み会。西武バス亭前の「紙風船」という居酒屋。13名集まって食事。ゼミ生が20名だから、講義の時間より出席率がよろしい。女の子たちがナマチューで、男の子たちとぼくがジュース系アルコールだったりするが、和やかに?歓談。みんなそれぞれに悩みとか抱えているのだろうが、屈託なさそうでちょっと安心。時間制限ありの飲み会で切り上げる。幹事役の佐藤さん、ご苦労さま。その後、学生たちがどこに消えたのかわからない。前は朝まで組があったそうだけど・・・。で、ぼくはというと代々木に帰ってきて、テンセグリティ・テーブルのスタディ。一応、構造的に問題のない図面仕上げる。90度軸で設計していない無重力空間にドキドキする。興奮して寝つけず、朝まで図面をいじっている。机の上のサボテンは見事なジオデシック構造をしているが、それを見ていて、多重の螺旋構造であることを確認。そうだった、テトラ螺旋は三重の、オクタは四重、ジオデシックは球形の螺旋体、なのだ。気がつくと一時間ぐらいそれを眺めて考えている。オーダーとカオスとフラクタルの生命体、自然の構造はなんと美しい言語でかたちをなしていることか。人に見られるとかなり怪しいかも。金曜日朝、4年ゼミ。教室にいくと永田さんがひとりで寝ている。・・・なんということか。前日組は確かに来ないといっていたが、ひとりもいない、という事実。彼女と話しをして早めに研究室へ。アクリル多面体のグラフィックを考え始める。これも早くレーザー加工に回さねば間に合わない。午後、院1年ゼミ。石川くんはあいかわらずマイペースで一直線型。他方、小塚くんは混迷しているが素直にそれを受け取っていて、好対照。先週から一進一退。夕方、空港に走るが最終便に間に合わず、代々木に引き返し、普段ならちょっと落ち込むが、今回はここぞとばかり多面体研究に没頭。あー、この集中力が一カ月前にあったら、もっと・・・と、いつもの後悔しきり。土曜日朝一のANAで徳島へ。4年ゼミの三人組、小山さん、丸山さん、徳重さんが研修ですでに徳島に到着している。彼女たちは高速バスで、ぼくは飛行機で。当たり前です、ぼくは稼いでいます。で、待ち合わせ場所にしていた開店していないガストの前で(食事して待っててね、と言ったものだが、閉まっていた。ごめんなさい)寝不足で立っている三人をピックアップして事務所へ戻る。食事はいっしょにメイメン堂でさぬきうどん。うーん、釜玉に癒される。味はいかがでした?研修初日からモデリングに入ってもらう。話し合いより作業、作業。テーマは多面体構造の家具。ぼくのいまのテーマとリンクしている。手作りジョイント部分の問題が解決していなかったが、途中、shuくんがボランティアで参加してくれ、見事に既製品を使ってエレガントなジョイントを考案。あとで見ると普通なのにそれがなかなか思いつかない。今回のものは前に彼と開発したジョイントを凌いでいた。あいかわらず切れるやつだ。夕方、大隆精機からテンセグリティ・テーブルのディテールモデルが届く。すっ、すごい精密。すでにそれはプロトの域を超えている。感動しながら学生に見せるがその反応は・・・。うーむ、これは大変なことなのに。自分たちの研修に集中しているから仕方がないけど・・・。事務所に人が来ると活気が満ちる。そういう時には訪ねてくれる人も多くなるから不思議だ。午後は石原金属の社長が覗いてくれ、中井さんが夕方に来所。shuくんと三人でアテネの打ち合わせ。詳しく書けないのが残念だが、とてもいい感じでコンセプトワークが進む。三人とも乗っている。シングル・コンセプトだったのが、ダブル・ミーニングへと成長し、上昇気流へ。(と浮かれている場合ではないのだが・・・)徳島大の風工学研究室の野田さんが、180面体ドームの風洞実験結果をもってきてくれる。これもメッセで展示できる。よしよし。野田さん、90ストラッドのテンセグリティモデルを唖然と見ている。夜、学生三人とshuくん、中井さんと焼き肉屋へ。やや疲れているものの学生もタフに研修一日目を終える。結構おもしろいプランを考え出した。その後、ぼくたちは秋田町へ。ショットバー二軒ハシゴして飲みながらアテネの詰め。アイデアと段取りの話がつづく。こういう日は間を置かずに一気に話しをしたほうがいい。頭脳がヒートしているのが分かる。数学処理するとコンピュータみたいに頭が熱くなる、という経験。フィジカルでおもしろい。問題は頭髪への悪しき影響だが、もはや気にもならない。二時頃まで話しをし、帰ってきて瞬く間に寝る。日曜日、もちろん学生は研修のつづきで、ぼくは仕事。四日後にせまった東京デザイナーズウィークのポスターが気にかかり出す。そのテーマを考えつつ別の仕事。グラフィックにかけられる時間が少なくなりつつある。大学と多面体開発とグラフィックの仕事、二兎じゃなくて三兎を追う場合はどうなるんだろう?夜まで仕事を片づけつつ、あれこれ雑用をこなす。あ、学生を忘れていた、と様子を見るとスタディに集中しているではないか。学生がホテルに引き上げたあと、ようやく多面体に復帰。快楽の時間がよみがえる・・・。朝までスタディをやってしまう。明けて月曜日。朝、デザイナーズウィークの新作家具の撮影に立ち会う。それを夜までに仕上げなければならない。スローダイニング。うむ、ファーストフード的生活を送っている自分がスローコンセプトのポスターをつくるというアイロニー。午後、阿南の大隆精機へ出向く。久しぶりだ。テンセグリティ・モデルの詰め。山田社長と担当の坂口さんと打ち合わせをする。彼は若いのに発想が柔軟。もし将来的にこのテーブルが世に出たら、きっと自分がなにをやったのかわかるだろう。山田さんはぼくの我が儘を暖かく見守ってくれている感じでありがたい。夕方、事務所へ帰ってきて学生と話しもできないまま、南新町の小料理屋へ。来年春にある大きな学会の仕事の初顔合わせ。巨大とも思える予算規模の学会だ。ぼくはそのデザインディクションを担当する。相手はとても優秀なある公立病院の院長だ。グラフィックの仕事ではあるが、サインとして、いま開発しているオブジェが採用されそうな気配がするが、どうだろうか?提案する内容と予算次第か。打ち合わせを終わり、深夜に事務所に帰ってくると学生はまだスタディをしている。感心します。遊びたい年頃だろうに・・・。ぼくは酔っているのだが、明日まで眠れない。昼に撮影を終えた家具のイメージポスターを朝までに仕上げる必要がある。疲れている。ちょっと、かなり辛い。体がいやがっているのがわかる。撮影データの状態が悪く、仕上げに苦労する。B全ポスター二枚のデザインで完徹。ヤバイ、死にそう。朝、四国写研に製版入稿、すぐさま校正をあげてもらい、午後五時には本社へ納品なのだ。ぼくは寝れないままアクリル20面体用の図版の仕上げに入る。これをレーザー加工にまわさないとメッセまでに新しいオブジェができなくなる。苦しいが仕方ない。うとうとする間もなく夕方までかかって一個分仕上げ、持ち込む。なんとかやってくれそう。寝てないと作業がもたつく。その後、ラジオ番組に学生三人と参加。初めての番組出演なのに上がってない様子。ぼくは徹夜明けでやや意識が朦朧として話しについていけない。世界がすこし遠のいて感じられる、危険な兆候。今年の前期は一週間にほぼ一回は完徹していたので慣れてはいるが、こんなこと続けたくない。事務所に帰りつき、shuくんとメッセの段取り打ち合わせして、学生より先に事務所を引き上げる。ベッドに潜り込むやいなや爆睡。水曜日、早稲田大の後期最初の講義だ。研修中の学生は夜まで事務所で研修をして高速バスに乗り込む。期待以上の成果が上がったように思うが、いかがですか?徳島の感想は?(ぼくよりshuくんの指導がよかったのは事実。実にこまめに学生につきあってくれて感謝。水曜日の夜、つまり彼女たちの最終日は飲みに連れて行ってくれたそうな・・・なんと人のいいやつ)つまり、ぼくが学生より一足先に東京へ行き着いているわけだ。関係ないが、ちょっと相対性理論みたい。午後、久しぶりに早稲田の理工学部へ。設計演習の中間講評。古屋さん担当でぼくもその一人。あとは磯崎事務所を独立した宇野さんだが、彼はいまスペイン旅行中。古屋さんと二人で講評を夕方までこなす。三年生も後期になると鋭いプレゼンが少しずつ現れる。建築に覚醒するやつが・・・。ぼくの課題提示をメッセの後に変更していただく。なにせこの10日は他になにもできない。夕方、新宿で生活用品の買い物して代々木へ。またまた爆睡。木曜日は朝から表示方法論。人のデッサンつづき、ぼくは研究室でメッセの配置図をつくり、事務局と大隆精機の柿本さんへファックス。アクロバティックな段取り。午後、院2年のゼミだが、風間さんと雑談になってしまい、馬口さんを指導できず、そのまま夕方まで。向井先生がウルムで勉強されたときのすごいテキストを風間さんが借りている。全ページのコピー頼み込む。シンメトリーについての貴重な考察。1940年代にこのような出版物があったとは・・・。モダンデザインの次を見越したような内容、そしてもちろんフラーの空間充填モデルも掲載されていた。夕方、研究室会議のあと、というか途中で抜け出し、新宿オゾンのエスティックのパーティへなんとか滑り込む。そのあと社長夫妻と古屋さん、小坂くんと広尾のla bisbocciaへ。このリストランテ、気に入りました。店に入った瞬間そこはミラノという感じ。味もパーフェクトでした。話と食が弾み、気がつけば三時間経過・・・。代々木に帰り着いたのは午前さまでした。そしていま気づいたのだが、明日の午前中までにアクリル20面体の別の図版をメールしなければならない、ということは、またまた徹夜?あー、いやだー、死ぬー。
2002.10.02_wed 台風一過。
今日は水曜日。ぼくは東京にいる。朝起きて、自分がどこにいるのか判然としないことがある。東京だっけ、徳島だっけ?けっこうそういう状態を楽しんでいたりする。徳島に滞在しているときは比較的忙しくて日記が書けないでいる。代々木の部屋は夜は静かで少し書くゆとりがある。で、思い出しつつ先週の土曜日から徐々に・・・。えーっと、最近ボロボロ記憶がこぼれるように忘れやすくなってるみたい。確か、午前中、shuくんとテンセグリティ・テーブルの話を詰める。あとアクリルの加工方法について少し議論。徳島ラーメンいっしょに食べてまた打ち合わせ。夜、月曜日のプレゼンの仕事にかかり出す。仕事、仕事。朝方までかかってしまう。日曜日、お昼から仕事開始。美術館を集中的に。午後、建築家の中井さん来訪。アテネのコンペ打ち合わせ。テンセグリティの構造的な話を・・・。フラーのままではダメ。もちろんのこと。しかし結果についてはお互いになんとなくイメージを共有している。そして、またまた多面体効果。興奮がよみがえり、そのまま仕事を放り出して、(多面体構造も仕事になればいいのだが、まだまだ・・・)朝まで新しいかたちの構造を模索。・・・で、できました。やった!ひとりで祝杯。たぶん、いやきっとそれは構造としてもつはず。モデリングで確かめてみないといけない。朝焼けを横目に寝室へ・・・。月曜日のプレゼン。なんとか通りました。夜、四国放送の岡本さんの番組に参加。10月のナイターオフから再開するプログラムに、多面体系を加えてもらうことに。火曜日、E社の社長と打ち合わせ後、引き続き、あわわの住友くんと打ち合わせ。三人でnovia novioで食事。夕方、中井さんとアテネ・コンペ詰めの話。構造はなんとかクリアできそう。あとの条件を少しずつクリアしていく必要がある。彼は控えめな性格だが、ものすごい力をもっている建築家。打ち合わせでときどき不敵な思考が顔をだす。その度にぼくは強いスマッシュのような刺激を受ける。コンペには最適のパートナーだと思う。夜、徳島ラーメン。ひきつづき深夜まで、コンペの打ち合わせ。今週末までに構造的な詰めを終えよう、ということになる。台風が徳島を過ぎ、関東に上陸した模様。水曜日、つまり今日、だ。ふたたび夏日のような暑さがもどってきた。午後1時5分発、ANAで東京に。そのまま大学に出向き、研究室で向井先生、宮島先生と会議。あと吉祥寺に出て食事をして街をブラブラ。ラッシュという店、気に入りました。原形質なものはとてもチャーミングだ。いろんな石鹸を買い込んで代々木へ。久しく集中できていなかった多面体への復帰によって頭脳が活性化されているのが分かる。コンピュータみたいに頭がヒートしているのだ。よしよし。・・・しかしそのせいか、髪の毛がかなり・・・ヤバイ。ま、いいんだけどね。
2002.09.27_fri 肌寒くなりました
なんか毎日の日誌のようになってきた。まとめて書くからそうなるのかもしれない。木曜日は朝から講義。表示方法論は手のデッサン。空気がすこし湿っていて肌寒い。寝不足気味なので、教室を歩く。午後は個人研究室で大学院2年の三人と面談。風間さんの花のパターンは向井先生の厳しい指摘でやや暗礁に乗り上げている感じ。馬口さんにはグリッドシステムを指導。山本さんからは熊野ワークショップの報告を聞く。ここまでですでに4時半を回っていた。総務課から連絡が入り、委員会に急ぐよう催促された。12号館8階で6時過ぎまで・・・けっこう会議は辛いです。苦手です。で、急いで地下へ。杉浦康平さんの課外講義、案の定、まだやっていてほっとする。韓国の花嫁衣装にまつわる生命樹、宇宙樹の談になって終了。ご挨拶をし、研究室へお連れする。明晰な頭脳をもったデザイナーは、周囲に気を配りながらも目は鋭い。その後、吉祥寺へ食事に。あいかわらず若い街だ。夜、帰ってきて多面体の折り紙に夢中になっている間に2時を過ぎている。ヤバイ。シャワーをあびて寝る。今日からサボテンと空中植物を育てることに。小さいが部屋の同居者だ。最近、サボテンがとても気になる。金曜日、今日も午前中からゼミである。小雨模様でかなり肌寒い。が、しかし。ゼミ室に出かけるとなんと2人しかいないではないか・・・。望月さん、グレイト・バリアリーフに行っていたとのこと。そのあとポツポツ集まってきて総勢10名程度になる。来週、飲み会やろうと提案する。息抜きも必要です。で、午後も院1年の二人と個人研究室で面談。小塚くんはまた迷宮入りか?石川くんはマイペースでシェイカー家具研究。芸祭時にアメリカのヴィレッジに行くという。原体験は研究に必須だ。二人にはカルテルの家具の組立も手伝ってもらう。少しずつ研究室の空気感が軽くなってきた。スチール家具は大嫌いだ。重くて気が沈む。ポリカーボネイトの家具がまだいい。ゼミ後急いでバス停へ。また徳島へ帰る為だ。東京と徳島の往復、よく大変ですねぇと聞かれるが、慣れるとそんなに大変でもない。移動中は本を読んだり、仕事をしたり、考え事をしたり・・・。一所にずっといるほうが辛いかもしれない。徳島空港も小雨で肌寒かった。母の実家で食事とシャワー。彼女は明後日からロシア、だそうだ。事務所へ帰り着いたのは11時過ぎ。ということで今週もめくるめく早さで過ぎていった。そろそろメッセの準備をしなければならない。あと残っている仕事・・・これがけっこう重くなりつつある。
2002.09.25_wed カイフとニューヨークバー
徳島に帰ったのは、先週の土曜日の最終便。事務所に着いたのは8時半頃。金曜・土曜とゼミの中間発表があり、そのあとすぐ空港に走ったのだった。9時頃、shuくんが例の正四面体からメタモルフォーズさせたメタル作品もって来てくれる。それはもうフードとは呼びがたいオブジェだ。二人でしばらくそれに見入る。板金の世界でこういうものがつくれるのだ。それは平面でありながら、豊かな空間を内包している。しかも透きの空間、である。内と外が入れ替わる。で、三角形の折り方を巡って少し議論。テンセグリティの椅子の構造についても話を進める。けっこう、興奮状態が続いている。多面体効果だ。正六角形を残して折るやり方も打ち合わせ。日曜日、一日仕事。移動疲れで体がすこし怠い。サボテンの頭を起こしてあげてふたたびトゲが刺さる・・・。月曜日、約束通り、カイフへShuくんの車で。夜の岡本さんのラジオ番組参加のためだ。丘の上にあるホテルから南海を眺めると、水平線が見事にゆったりとした弧を描いているのがわかる。放送中、ナサの海から月がゆっくりと現れ、やがて上空へ。月の公転と地球の自転を感じる。孤独なふたつの円弧。100年前と同じように宇宙の漆黒のなかをそれらは運行している。番組のあと、温泉につかり、朝まで仕事をする。火曜日の午後、ふたたび徳島へ帰り着く。午後、なんとカイフから先に帰ったshuくんが例の正六角形に折ったヴァージョンをつくってもってきてくれる。朝はやくから鉄板を折り曲げ、溶接して塗装してくれていたのだ。・・・絶句。夜、大学の講義準備。そして今日水曜日、朝9時15分発のANAで東京へ。午後のデザイン演習はコンピュータ室でグリッドシステムを講義。夕方、図書館で向井先生の展覧会の打ち合わせ。リシツキー展も見る。その会場で次に行われるのが先生がドイツ・ボンで行ったインスタレーションだ。ぼくはグラフィック担当。夕方、散髪。夜、パークハイアットのニューヨークバーで食事。空中から都心を眺める。100年前に誰がこういう都市になると想像していただろうか?そして100年後の都市をぼくたちは想像できるだろうか?カイフとニューヨークバーでぼくはほぼ同じようなことを考えていた・・・。
2002.09.21_sat 連休の前の日
明日から三連休だ、ということを忘れていた。明日も大学のゼミ発表が朝から午後三時までつづく。明後日はそれこそ残している仕事の山を少しづつ片づけて行く必要がある。月曜日は岡本さんの番組に出演しなければならない。ということは休みが、ない。で、今日は朝からゼミ発表。学生の集まりが少ない。提出まであと三ヶ月あまりとなったのだが、就職とか焦りとか、いろいろあるのだろう。午後、個人研でE29と打ち合わせ。徳島に4日間きて、テンセグリティの家具などをつくることに決まる。その後、望月くんが訪ねてきてくれるが、研究室で問題が起こり急遽、夕方、代々木で会うことにする。その問題はちょっと気の滅入る内容。管理する立場のぼくのミスから起こったことなのだが、覚えがない。でもやっぱり管理者責任というやつだ。ちょっと落ち込む。夕方、帰宅。7時、望月くんと待ち合わせて焼き肉屋へ。マンションの近くなのだが、けっこう旨かった。その後、大隆HPの打ち合わせ、そして今に至る。東京に来ると一日が早い。そして疲れやすい。寝るのはいつも12時前。徳島だと朝まで仕事をしたりするのだが・・・。
2002.09.20_fri 忘れていたあの興奮がまた・・・
木曜日、午前中は表示方法論。耳のデッサン。とてもいい天気。もうすっかり秋の空、だ。たびたび、徳島のshuくんから電話があり、20面体、80面体用のルミナ・アクリルの話。彼がどんどん話を進めてくれるので助かる。午後、個人研で大学院の二年ゼミ、まず風間さん。彼女はインターラクティブな図形生成ソフトを使用して、花マンダラをブックレットに仕上げようとしている。4限は馬口さん。懐石料理のレイアウトと日本庭園のアナロジー。頭を切り換えなければ指導できない。二人とも優秀な学生だ。夕方、shuくんから電話。20面体を囲うフードが仕上がったとのこと。興奮している。それにしても仕事が速い。これは徳島での打ち合わせで、アクリルを光らせるのにフードが必要だ、という着想から、立方体をつくろうとぼくがもちかけ、彼からそれは違うんじゃない?と指摘されたことからはじまる。で、多面体で合意したのだが、その次の日にプロトモデルを仕上げるとは!しかもとてもエレガントな解決方法!それはshuくんのお父さんが提案された、とのこと。この親子はすごい。無理を言ってメールで写真(岡本和夫さんのヘルプだ、すみません、いろいろと)を送ってもらう。見てぼくも興奮。確かにこの仕上がりは・・・。(日記にくわしく書けないのが残念)自分たちが開発しているというのに驚いている。いままで見たこともないようなカタチがそこにあるのだ。久しく忘れていたシナジェティクスの醍醐味を味わう。今回のメッセ、大きな装置はないけど、テンセグリティといい、アクリル多面体といい、新しいOSモデルがまたまた提案できそうだ。夕方、教授会。長い長い長い会議。3時間以上!ぼくもとうとうある委員会の委員になってしまった。いや、させていただきます。がんばります。研究室に帰ってまた会議。うーむ・・・。夜、10時半。もちろんバスはもうない。歩いて鷹の台駅へ。でも、モデルの完成で興奮していてぜんぜん疲れない。電車のなかでその図面をマックで仕上げる。ほんとにすごいアイデア。多面体を思考することがぼくの一番の快感になっている。
2002.09.19_thu そして東京・・・
水曜日、朝9:15発ANAで東京へ。同じ飛行機に搭乗していた仙石さんとご挨拶。ずいぶんやせた感じだがお元気そう。「病気になってから周りのひとがやさしくしてくれるよ」とぽつり。確かに政治家はいまどき外からも内からも厳しい目で見られるだろう。好きでないとやれない仕事。空港から大学へ直行。そのまま、午後のデザイン演習の講義へ。今日はぼくの担当で、グリッドシステムとタイポグラフィ。先週の興奮をなんとか学生に伝えようと、バウマンさん、アイヒャーの仕事を紹介。課題が目白押しなので、ぼくのは自主課題。自分でテーマを決めて小冊子にまとめる。年末までに提出すること。何人の学生が応えてくれるだろうか?研究室ですこし来週の打ち合わせ。杉浦康平さんが課外講義と向井先生との対談でムサビに来られる。杉浦さんは去年の夏、徳島のぼくの事務所に遊びにいらして一年ぶりの再会。基礎デザイン学科の創設時に深く関わりをもたれたことから今回の企画が持ち上がった。ぼくが学生時代、清原悦志先生の事務所に作品を持っていったときに、「君、杉浦くんの事務所に行きたいの?だめだよ、君は影響受けやすそうだから、つぶれちゃうぞ」と冗談ともつかぬ話をされた記憶がある。なにせ、卒業研究は「杉浦康平論」だったから・・・。デザインへの知的なアプローチをするデザイナーは日本では少ない。原弘、杉浦康平、勝井三雄などごくわずかだ。杉浦さんのウルム造形大からの水脈、そして突然のアジア回帰。今後のデザインの方向性。来週の話が楽しみだ。助手の中村さん、個展間に合うか?夕方、代々木に帰り、そのまま原宿へ出かけて食事。夜、秋の気配がますます感じられるようになる。
2002.09.17_tue 後期のはじまりの一週間
夏休みが終わり、後期が始まった。案の定、日記を書く余裕のない日々であった。先週の日曜日に東京へ行ったきり、土曜日まで滞在することになる。最近は東京の方が長くなりつつある。初日の夕方、吉祥寺でドイツから招聘教授として来日したゲアド・バウマンさんと会食。最後に会ったのが、バウマンさんの自宅を訪ねた5年前。その時はキール週間の仕事でドイツに度々出かけていたから、いろんな場所で会っていた。緻密でスタティックな仕事と対照的に、性格はとても愉快でユーモアに満ちている。人を楽しませることが無情の喜び、といったところが実はその仕事のなかにも隠されていて、クールな処理を無機質な表情に終わらせない。仕事をまとめた厚い本のサンプルを見せていただく。20年間のアンソロジーで、今月出版の運びになるとのこと。この本をつくるのに32ヶ月かかったよ、という内容は、ぼくの知っている過去の作品から近作のシーメンスまで。大英博物館のサインシステムや議事堂サインなど、ノーマン・フォスターとの共同作業がつづく。ヨーロッパでも一級の仕事だ。特にシーメンスのCIはフィボナッチ級数をグリッドシステムのみならず、タイプフェイス、色彩計画、そして計画全体のコンセプトにまで応用している点で、アイヒャーの水脈を見事に先へと延ばしている。それに比べて(比べようもないが・・・)最近のぼくはサボリっぱなし。嫉妬をするというより呆然としたままその作品集を眺めていた。会食は葡萄屋というしゃぶしゃぶの店。なかなか美味。そのあと東急インにて先生たちと来年の人事をめぐってのミーティング。(・・・詳しく書けないのが、公開日記のややこしいところ)で、開けて、後期第一週の月曜日。二年生の形態論ワークショップがはじまる。オリエンテーションだけでおわる。ぼくの担当ではないけれど、バウマンさんにできるだけ張りつこうと思う。ドイツではシュトュットガルトから一時間くらいの場所にあるギュムントの町のご自宅にいつも遊びに行き、世話になった。初日は彼の作品のプレゼンテーションと課題の提示。谷崎潤一郎の陰翳礼讃をポスター展開する。バウマンさんらしい内容だ。しかしそれにしても聴講学生の集まりが悪い。休み明けということもあるけど、ドイツでもそんなに聞けない話なのに残念。夕方からオープニング・パーティを12号館の8階で研究室スタッフと学生たちと。火曜日の夕方、向井先生とバウマンさんと神田の竹尾見本帖ギャラリーへ。内容はドイツのアーティスツ・ブック講演会。バウマンさんが聴衆のひとりとは信じられないことだ。とうとう途中から眠ってしまった。水曜日からぼくの講義がはじまる。デザイン演習の講評。末廣先生の担当でノーテーション。内容はむずかしいがこれを身につけると表現に深みがでる。学生が少ないのはなぜ?木曜日は表示方法論。夕刻から二回目のプレゼンテーション。小雨が降りはじめたが学生の入りはいい。題は、ローティス・イン・ローティス。書体の概念とその応用。思想的な背景がデザインを裏打ちするダイナミズム。拝金主義と個人主義が最近の日本のデザイン・コンセプト?金曜日は午前中が四年生のゼミ。大幅に遅刻して出校。申し訳ないです。ひさしぶりにみんなに会う。卒研の進展は・・・。顔を見ない学生がいる。心配。午後から宮島先生とバウマン氏を外にお連れする。原宿、青山あたり。イッセイのフェチギャラリーにはまいった。この人は本当にマテリアルへ執着している。路上で何人かにお会いする。青山はそういう場所かもしれない。そのあと宮島先生と別れ、バウマンさんを朗文堂へお連れする。久しぶりの新宿御苑。久しぶりの片塩さん。ちょっと懐かしい。やせて白髪が多くなった感じ。タイポグラフィの道を少しずつ歩まれている。ぼくはよくコースアウトするけれど。朗文堂の周辺の方々にも久しぶりにお会いする。土曜日はワークショップ最後の日。午前中、研究室会議。午後、12号館の地下でプレゼンテーションがはじまる。心配していた学生の作品もきちんとA2に仕上がり展示される。なかなか壮観。バウマンさんの丁寧な講評。学生に讃辞を送りつつ、改善点を的確に指摘する。自分に挑発してきた作品に好感をもっていたようだ。この日は外の人も大勢訪れる。西野さん、ミトさんにも久しぶりでお会いする。バウマンさんに会いにきたのだ。西野さんはいま国立音大で講師をされている。ふと、図形楽譜も含めてムサビと共同作業ができないかと思い相談する。プレゼンが終わったあとパーティには出ずにそのまま空港へ。ややぐったりしつつ徳島へ。第一週はこんな感じでおわったのだった。事務所ではまたまた植物が弱っていてあわてて水をやる。サボテンが一部黄ばんでいてかなりヤバい。ごめんね。人のない事務所は寂しいが、東京でのあわただしい生活から静かな徳島にもどるとほっとする。日曜日、石原金属の社長がメッセの資料をもって訪ねてきてくれる。一日、仕事。月曜日は祝日だけどもちろん仕事。朝、shuくんが90ストラッド・テンセグリティを持って来てくれる。・・・すばらしい仕上がりの一言。きれいに張った状態の完全球だ。直径約1mのそれは空中に浮遊する未来のオブジェの姿をしている。5mm径、30cmのアルミパイプ90本とステンレスワイヤー、そしてshuジョイントによる、コンプレッションとテンションの調和が生み出した統合体だ。分子構造にはじまり、生物細胞、あるいは惑星間の構造をモデリングしている。また今度、望月くんに頼んでサイトに載せようと思う。そのあと彼とメッセの打ち合わせ。10月中旬までにやることが山積みだ。夜、小雨。少しずつ秋の気配が忍び寄ってきている。
2002.09.7_sat 経営という社会貢献、堅そうだけど
京セラの稲盛会長、というよりぼくにとっては京都賞の創設者としての方がイメージを喚起させてくれる。その受賞者のなかにはマックス・ビル、イサム・ノグチなどがいて、既にある美術やデザインの領域にカテゴライズされない各界の異才をきちんとゲットしてきた。経営というぼくからもっとも縁の遠い存在のように思える人が語る内容は、社会貢献、というその一点につきる。雇用という問題と地域貢献。会社経営=拝金主義と簡単に言い切ってしまえない経済システムで世界が構成されていることに思い至る。そのひとがいまぼくのすぐ目の前で昨今の世界経済、日本経済の危機的な状況に言及している。それは、複雑な経済システムについてでも企業繁栄の方法論でもない。米国のエンロンや日本ハム、東京電力の不祥事を通して資本主義のあり方を見つめている。それらおよそトップの判断ミスとして語られ、あるいはモラル欠如として語られ、見過ごされがちな点について。それはトップの人格、の欠如に尽きるというのだ。利他の精神の欠如、である。うーむ、当たり前といえば当たり前のことかもしれない。いま米国のトップだってその人格があやしい気配。しかし稲森さんのやわらかな語りから感じ取れるのは、まさに経営やデザインといった領域を越えたもの。なぜ私たちは社会のなかに生きているのか?社会に対してなにができるか?という共通テーマだ。・・・そして今日、午後おそくに徳島への帰路につく。
2002.09.6_fri 京都は雨模様
いま京都にいる。正確に書くと、宝ヶ池の国際会議場の駐車場だ。あるカンファレンスがあって、その懇親会場から抜け出してきてこれを書いている。パーティは好きじゃない。朝、徳島から知り合いの方々を乗せて、ここに来たのだ。ぼくがドライバー役、やれやれ。いまは小雨で涼しいが湿気がある。この街に来るのは本当に久しぶり。予備校に通うために京都で一年間暮らしたことがあるので、それからするともう二十五年以上になる。道の広さは同じだが、街はだいぶん変わった。記憶のなかの京都はそのままの表情で佇んでいる。宝ヶ池にはチャリンコで何度か来た。自分がどうなるのかわからず、大学も決まらぬ不安定な時期だったけれど。京都の生活は確かにぼくの一部になっている。ジャズ喫茶と予備校の日々。本ばかり読んでいた。吉岡実と谷川俊太郎。一人を満喫してた。明日、徳島に帰り、日曜日から東京暮らしが始まる。
2002.09.5_thu あわただしく日々が・・・
気がつけばもう九月になって五日たつ。予想通り毎日、記録を残すのはむずかしい。日曜日に徳島に帰ってきてからの記憶がすでに曖昧だ。月曜日は、なんだったっけ?仕事はもちろんのこと、雑用で一日が終わったように思う。火曜日は朝からE社の社長、部長に立川さん、鳥羽さんを紹介する。その後、shuくんと風洞実験用のドームの打ち合わせを再開。あたらしいOSを生み出すのは前途多難。掃除会社の若い松尾くんがきて、事務所を清掃作業してくれる。丁寧さに感心。トイレはときどき自分で掃除する、当たり前だけど。山田社長の教えでもある。トイレを清掃するものはトイレを制す。よくわからない話かな。旧い、といってもこの四月に買ったPower bookが退院して帰ってくる。うれしい。で、相手をしていて気がつけば夜。水曜日、朝から大隆の社長、桃さんと打ち合わせ。メッセに向けて本格的に始動。テンセグのテーブルと新しいタイプのドームモデルの制作に取りかかる。ブースは4m x 4mと小さいが、そこには今世紀の半ばには都市の風景になるだろう構造OSが並ぶ。テーブルの命であるトップとの接点について細かい話し合いをして、その後、メイメン堂へみんなで出かける。釜玉を味わう。ほとんどフェチの域に達するくらい、ここのさぬきうどんが好きだ。で、帰ってきてふたたび会議。途中からshuくんがジョイント。夜までドームの閉じ方を巡って議論。ほとんど絶望的なくらい話が煮詰まったときにふとある着想がshuくんから。で、ぼくがそれを拾って少し展望が開ける。午後8時半にお開き。その後、住友くんから電話で呼び出し。ひさしぶりに竹尾さんと飲む。忙しそうだけど、元気そうで何よりだ。そういえば、立川さんから聞いてショックだったのだが、薔薇亭のマスターが亡くなったそう。つい一週間前、ゼミの望月くんと研修最後の夜にそこで少しだけ飲んだのだけれど・・・。マスターに初めてあったのは、もう20年以上前。すごく緊張しながら飲んだ記憶がある。一時期はよく行きました。落ち着いていて、カクテルのおいしい店。お客を楽しませながら、プロの味を出していた。ある時期からマスターが対等に話しをしてくれるようになって、なんだか自分が大人になったような気がしたものだ。知り合いの人に急に会えなくなる。でもその人は意外に近くにいるような気もする。・・・そして、今日に至る。そのことはまた後日書きます。これから人が来るのでこのくらいで今日は終わり。ふう。
2002.09.1_sun 晴天の東京から雨の徳島へ。
金曜日は東京のなかをずいぶん移動した。で、大学に行くのがすごく遅れて、ついたのが午後5時半。研究室を久し振りにのぞくと助手のみなさんがいる。元気そうでなにより。そのまま図書館に出向き、向井展の打ち合わせに入る。夏休みのキャンパスは通信の学生さんがまばらにいるだけで閑散としている。滝沢さんとばったり出会う。国際ポスター展ではすごくお世話になった人だ。その人格といい、風貌といい好きなタイプ。といっても男の人だが・・・。今年で定年を迎えられると聞いてちょっとショック。夜、バスが行ってしまった後なので、鷹の台駅まで歩く。学生時代、何度この道を行き来しただろう。駅前のパブはいまも健在だ。入学式の初日だったかに同級生とここに入った記憶が鮮明にのこっている。代々木に帰って仕事のつづき。土曜日もずっと仕事。なんということか?日曜日の午後、徳島に帰ってくる。東京ではずっと真夏日の晴天だったのに、こちらは雲行きのあやしい強風が吹いている。事務所についたのは午後遅く。そしていままでまた仕事。うーむ、場所がちがうだけでやっていることは同じ。
2002.08.30_fri あわただしい木曜日
だれもいない事務所もけっこう千客万来だ。ひとりでジュースを出したりかたづけたり。そういえばサボテンに水をやらなかったらすっかり頭がさがってしまった。申し訳ないね。持ち上げようとしたら棘がささる。なんか怒っているな。多面体の生物。台風のせいか空の動きが感じられる。湿気はあいかわらずだ。ユトリロ展の三校が出る。色がすこしだけ違う。それはインクのせいではなく、製版のせいでもない。光、だ。岡本さんが仕上がったCDをたくさん持ってきてくれる。ライブ盤で、これはデザインがすごく遅れて迷惑かけました。いろいろ迷惑かけて謝ってばかりの今年前半です。夕方、エスティックの福村社長が来社、大阪ショールームのサイン打ち合わせ、デザイナーウィークのことなど。shuくんも遊びに来てくれる。ジュースを出してくれたりする。気遣いのあるいいやつ。ぼくには決定的に欠けている性格。メッセとコンペの話しを少しする。仕事は細々としたものを沢山する。明日から東京だ。ゼミの学生と会ってからムサビに行って、図書館で向井先生の展覧会の打ち合わせ、あーたいへん。それまでに仕上げる仕事が・・・。徹夜はぜひ避けよう。
2002.08.29_thu ときどき雨・・・
いまは夜の一時半過ぎ。外は湿気のあるなま暖かい天気。人とうまくコミュニケーションがとれないときはたいがい自分に問題がある。すこしの思いのズレがどんどん広がっていく、まるで裂かれた布のように。ぼくは呆然とそのほつれた裂け目を眺めるばかりだ。午後、小川さんが新しいpower bookを持ってきてくれる。ハードを移植して前のやつは病院送り。ipodも到着したし、なんだか機械だらけ。夜、坂東さんと会う。誰もいない事務所に帰ってきて、またコンピュータに向かう。
2002.08.28_wed 日記というか日々の記録というか・・・
・・・そう感じで書き込んでいこうと思う。毎日というのは、自分の性格上無理だとわかっているので、時々、思いついたら、しかも発作的に、というスタイルで。今日はゼミの望月くんが約10日間過ごしたぼくの事務所から東京に帰っていった。その間にこのurlをつくってもらっていたのだ。感謝。で、仕事の方がかなりまだ溜まっていてなかなか夏休み気分が味わえないでいる。午後は大隆精機の山田社長と石原金属の石原社長とミーティング。10月のメッセの大枠を決める。いまは夜中の二時半。これから朝までがぼくのもっとも仕事に集中できる時間だ。さてさて、なにから片づけようか。