日記をさぼっていた。書かなくなると、だんだん負担になってきてけっこうくよくよしている。何人かに日記更新していませんね、と言われると、また負担になって・・・。別に人に読んでもらおうと思って書いているわけじゃないけど、見ていてくれるとなるとがんばろう、という気にもなる。で、前に書いてからもう一ヶ月以上たってしまった。早い。その間のことをきちんと書くのは不可能になったけど、がんばって再開しようと思う。最近、物忘れが激しく、一週間のことがうつろに記憶のなかで漂っている。忙しいのと年のせいで、かな?誰かから四十代って坂道を転げ落ちるのに似ているって言われたけど、まさに。こういう時は時間をさかのぼって書くといいということも聞いたのでやってみる。では、今日から・・・。朝から近代美術館の今期最後の特別展のグラフィックの仕上げをしていた。ドイツの現代作家、リヒターである。写真を再び描き直し、それをオフセットでプリントをするというややこしい技法で対象物を解体していく人だ。静謐でおとなしい作風だが、深い。実はアテネのコンペを終わってから始めたのだけれど、うまくいかずこの一週間、画面とにらめっこしていた。彼の娘を主題にしたB全ポスター、アブストラクトのB3ポスター、そしてリーフレットにチケット・・・。午後のプレゼンを学芸員の吉原さんに無理をお願いして夜にのばしてもらい、一気に仕上げる。最終的には満足のできるものになった、はずである。甘いな、ツメが、きっと。(印刷所の入札結果がでるまであと一週間あるから、ブラッシュアップしよう)週末から今日にかけてずっと事務所にこもりっきりで久しぶりに集中した。コンペ以降、もうひとつ体調が思わしくなくてデザインから逃げていたのだけど。さらにさかのぼっていくと・・・金曜日・土曜日は新潟に行っていた。東日本デザイン団体会議に出席するためだ。同じ学科の宮島先生と視覚伝達デザイン学科の先生と女子美の先生と。場所は金属加工のメッカ、新潟県燕市。東京から関越自動車道で三時間ちょっとだった。基調講演は長岡造形大の豊口学長、さすが大阪万博のくだりは感心。金曜日は鍛冶体験をして東京へ新幹線で。その間を利用して学会のストラクチャ構造を設計。ほぼ見通しがたつ。いい感じ。(ところで工場見学は感動の連続であった。なぜ工場ってドキドキするのだろう?特に金属加工の機械を見ると異常に興奮してなにか造りたくなる。金属フェチ?)で、木曜日、うーんと、大学で講義して、そして思い出した。教授会だった。なんと5時間以上!学長選の予備選もあり、疲労困憊。そのあと研究室会議で夜の11時半。会議がいやでサラリーマンを避けたはずの人生が・・・なんということだろう。代々木に帰り着いたのは午前様。なにもやる気がしなくてダウン。で、水曜日、この日は徳島にいて、フラーの友人、リムさんをお迎えした。この件についてはまた別の機会に書こうと思うが、エキサイティングな出会いだった。その三日後の日曜日にリムさんから電話をいただき、フラーの共同製作者サダオ氏に連絡をしてくれたそうだ。どんな風に?へんなやつがいるよ、とか言われてたりして・・・。そして本当かどうか今度メールで確かめるが、来年一月にマレーシアとシンガポールで展覧会を開きなさい、コーディネートしてあげる、と言われたのである。流暢な英語のため、たぶんとしか言えないが。You should keep in touch with me, right? (連絡を忘れないように、いいかね?)と前と同じ言葉で念押しされつつ。としたらば、ぜんぜん時間がない。二ヶ月間の猶予。彼の言い方は再来年の一月じゃなかった。フラーのドームは見たいけど・・・(リムさんの所有するホテルの庭にフラーと共同で制作した40mのドームとフラーが滞在した部屋を残してあるそうで、それはぜひ見たいものだが)時間はさかのぼる。火曜日。いまスケジュールノートを広げた。もはや記憶が曖昧になっている。火曜日は疲労困憊していた。月曜日がアテネコンペの締め切り日で、その翌日。午前中から午後にかけては事務所の大掃除。明日のリムさんを迎えるためにかなり真剣に。夕方、来年の泌尿器学会のデザインミーティングを事務所で。あと読売新聞の記者の取材を受けて・・・。あとなんだっけ?覚えていない。あ、そうそう夜、ラジオに出演したあと、中井さん、shuくんと韓国料理の店でコンペ打ち上げ。さすがに倒れて寝ました。月曜日。覚えています。死にそうになっていました。朝方、A0ポスター二枚のうち、最後の出力データを四国写研に出し、そのまま寝たかったけど、中井さんとshuくんが事務所にやってきて梱包準備をしたり、もう一度レギュレーションを確認したり、提出書類をまとめたり、そうこうしているうちに出力されパネル張りされた二枚のポスターが事務所に。自分でいうものなんですが、なかなかいいです、仕上がりが・・・。48時間ほぼ連続した作業がそこに凝縮され、なんてね。至福の一瞬。で最終梱包し、二人が神戸のDHLまで運んでくれました。(荷物はDHLのホームページでアテネまで追跡でき、木曜日の時点で向こうに着きました。やりました。あとは審査結果を待つのみ。審査員にアピールできるだろうか?)日曜日。終日コンペ作業。四国写研の渡辺さん、休みの日に色校を出してもらったり、写真を修整してもらったり。ここでかなり質が向上したのでした。コンペは最後の追い込みと質をどこまで高めるかが勝負。今回は予想を上回っていい感じになったもの、彼のおかげ、ありがとうございました。土曜日。この日のことは忘れないだろう。朝はやくに徳島に帰るため羽田空港へ。でも席がとれず、さくらラウンジに直行。普段はすこし休んだり、シャワーを借りたりするだけなのに、最終便までずっといた。ちょっとノドが痛かったけど(このときはまだ元気で、結果的に月曜日に最悪の体調になってしまう)アテネコンペの作業。中井さんの図面を精緻化したり、ラフを変更したり。けっこうねばってねばって。その時間の醍醐味は、とても苦しいけど、言葉でいいあらわせないほど豊かな気分だ。自分が空港にいることも時間のことも忘れて没頭。おかげで一日、食事をとらなかった。金曜日、大学で4年のゼミと大学院のゼミ。卒制提出まであと二ヶ月。代々木に帰ってからコンペ作業開始。忙しい日でした。木曜日、終日大学にいる。夜、徳島では中井さんとshuくんに無理をいってモデルの夜景を小松海岸で撮影してもらう。もちろん、米津さんが撮影。荷台の車のハイビーム光とライト三機で照らし出したそうな。仕上がりは・・・最高でした。今回の仕上がりは米津さんの写真によるところが大きい。デザインでがんばろうという気にさせられる。米津さん、素晴らしい写真ありがとうございました、結果がよければいいですが。水曜日は早稲田大で講義。ぼくの課題提示の番で、テーマはジオスコープ・パーク。地球を外から見るように自分を相対化してもらう。21世紀の子供たちのために。(けっこうマジだったりする)作品提出は二十日。火曜日、朝五時半、小松海岸にチームと米津さんで集まってご来光を背にモデル撮影。釣り人が数人いたけど、きっとへんなやつらだと思ったことだろう。夕方、泌尿器学会デザイン打ち合わせ。月曜日、終日モデル撮影。でも天候が悪く、午前中にボードウォークに行くも途中で断念し、天候待ち。映画の撮影みたいだけど、屋外の撮影はこうなってしまう。イライラするけど仕方がない。この時点ではコンペの雲行きやばし、と懸念された。日曜日は終日、コンペの下準備。(仕事でプレゼンしたけど記憶が飛んでいる。信じられません、やったこと忘れるなんて)土曜日、テトラヒリックと二十面体のパッケージをオキタくんとつくる。午後で終わるつもりが深夜まで没頭。11月1日金曜日。この日は大学にいた。芸祭で大学は休講だけど、将来構想委員会なるところで基礎デザイン学科の将来を語る。ぼくが語っていいのだろうか?不安なのにしゃべれてしまう自分が怖い。木曜日。この日のことはよく覚えている。大学は休講で、なにもすることがない。ほんとはやってない仕事やコンペがあるのだけど、ムクムクとモデリングしたい病が朝から募り、東急ハンズへ行ってアルミパイプやジョイントの素材を買い込んでしまう。どうしてハンズに行くとワクワクするのだろう。病気再発?代々木のマンションから新宿南口のハンズまで歩いて約10分。近いのが災いした、と言える、かどうか。で、前から気になっていた八面体を四本ストラッドのテンセグリティで試作する。深夜に仕上がる、やっぱりできるのだ!夏休みにはうまくいかなかったが、その理由も今はわかる。ハンズに行って良かった。結果的には四面体のカタチになったけど、構造はちがう。それはあきらかにフラーのモデルにはない。興奮する。ひとりでモデリングしてドキドキしているのは人から見るときっと不気味にちがいない、というバランス感覚はまだ残っているつもり。でも、狭いマンションのなかでひとり声に出さず絶叫する。やったー。これは次のプロジェクトに・・・ムフフ。(やっぱり病気でした)火曜日、29日だ。この日は徳島の吉野町、車で約1時間のところにあるエスティック本社で打ち合わせ。夕方帰ってきて、飛翔会という経営者のグループを事務所に迎え、講義。夜、料亭で接待される。女将さんの小唄を聞く。オヤジな一夜。月曜日、終日、打ち合わせ、だったように思う。書いてないけど、この一週間は毎日コンペチームと議論を重ねた。それが最後のスパートにつながったのだと思う。無駄なようだけど、思考実験は大切だ。・・・ここまで書いてきて、そろそろ記憶が茫漠としている。スケジュールに書いてあることしか記憶になかったりする。あと、ビジネスメッセのことやその準備の頃のことがあるのだけど、それは次回元気があったら書くことににしよう。総じてこの一ヶ月はメッセとコンペに終始しました。そういえばメッセの前も徹夜してたような、その前も徹夜したような。学生時代から二十年たつけど、ずっとそういう生活が続いているような。で、体がボロボロかというとそうでもない、(と勘違いしているだけなのかな?)ストレスはゼロかもしれない。大勢での会議とパーティが苦手なだけだ。(前者は顔が硬直するし、後者は笑顔つくるので疲れる)好きな仕事を選んでよかった、とつくづく思う。さて。この一ヶ月間のエポックはリムさんに出会えたことでした。夢は念ずればかなうのだ、しかも無理に求めなくてもやってくる。ごく自然に。そう確信するようになってきた。メッセに出品したのも、そのためにドロドロになったのも、彼に会って、シナジェティクス・モデルを見せるためだったのかもしれない。フラーに会うことはもはやかなわないが、リムさんを通じて、彼のコンセプトに少しだけ触れたように思えたのだった。お世話になったいろんな人に多謝。
|
|